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「サイタマ新都心」三原ごりえさんのスペースにて
スパコミ新刊「春のさかり」を委託していただく予定になっています!
ごりえさんはプチオンリーで、シールラリーに参加されるとのことです。
あふう楽しみ…!今からどきどきしています^///^
どうぞ宜しくお願いいたします!
明日は名古屋の十忍十色もあるようですし、
シティも忍たまのプチオンリーということで、
至るところでにんにんですね!はあはあ
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ここの所、薄暗きり土井妄想がもやーんもやーん
頭の中を駆け巡っていまして、ぶつぶつ呟いていたのですが
それに応えて増幅してくれる人がいるっていうのは
良いものですね…!ついった素敵!きゃあ^///^
夏コミ原稿にとりかかりたいのですが、まんががかけなくて
日々悶々としつつ、小話を書いてみました。
文章にもちょろり挑戦。つづき、からどぞー
昨日の「あきらめさせて」の段 タイトルから妄想
ちなみに内容はひとっかけらも関係のない牧ノ介回でした^▽^
だらだらと長くてすみません…
諦めさせて(きり丸五年生)
二人しか存在しない空間での食事ほど気まずいものは無い。
学園に居る時は、食事の時間を先生とずらせば良かったし、乱太郎達もいるからどうとでも誤魔化せる。
だけどこうして、長期休暇で先生の家にいる間は違う。
二人の間に横たわる、圧倒的な沈黙。
お互い向き合って、相変わらずイナゴしか入ってない飯をただ流し込む。
最初のうちは先生も話題を振ってきたけれど、俺がはいとかいいえとか、
胡乱な返事しか返さないことに呆れたのか、口数も減った。
何の味もしない飯を機械的に口に入れながら、俺は先生の顔を盗み見る。
黙々と食事をするその顔からは、何の心情も読み取れない。
あの時を思い出させる硬い表情に、俺はまた暗い気分になる。
その日はたまたま火薬委員が不在で、土井先生の手伝いをしていた。
学年が進むにつれ、山田先生や土井先生以外の教職員の授業も増え、
必然的に土井先生と一緒の時間は少なくなった。
一年の頃のようにバカばっかりやって叱られることも、補習授業を受けなければならないことも無くなり、
ただの教師と一生徒のように過ごしていた。
「今日はあいにく、火薬委員が全員出払っていてなあ…。きり丸、悪いが手伝ってくれないか?」
俺以外だって頼める生徒はいるだろうに、わざわざ探してまで声をかけてきたことが嬉しくて、
お駄賃も出ないのに!なんて軽口を叩きながら、
俺は久々にゆっくり先生といられる一緒の時間を堪能していた。
お互いの近況を話しつつ、手伝いを終えて裏庭に出ると、茂みの方に微かな気配を感じた。
普段人気のないそこに何故?と思っていると、土井先生も感づいていたようで、
頷きあって気配のする方に忍び寄る。
薄暗い木陰を良く観察すると、隠れるようにして6年の先輩が二人立っていた。
いや、ただ立っていた訳じゃない。二人は抱き合い、口付けながら何事かを囁いている。
あれは… 見慣れた顔二人の情事に、俺は思わず赤面する。
男同士でこんな所で、と思いつつ、男同士だからこそ隠れないと会えないのだろう。
先生も、曲者ではなく密会であることに気付くと、気まずそうにその場を去った。
俺も慌ててその後を追う。
なんとも言えない雰囲気に、二人とも黙り込んでただ歩く。
俺は先ほど見た光景を反芻しながら、先生の後姿を眺めていた。
「男同士の恋情など、非生産的だ」
驚くほど冷たい声に、俺ははっとして立ち止まる。
「若いうちの熱情に踊らされるのは、忍の三禁を破ることだ。
あの子たちだっていずれ気付く、自分達のしていることに意味など無いと」
「そんな感情を持つこと自体、間違っているのだと」
一言一言、先生は誰かに言い聞かせるようにはっきりと言う。
その冷めた口調に、俺は氷水でも浴びせられたかのような気持ちになった。
まさか。まさか。俺の先生に対する想いを、先生は知っているのか?
振り向かない後姿、冷たい口調、二人の間に流れる空気に俺は途方も無い焦りを感じる。
俺はもうずっと、いつからか思い出せないくらい前から先生に恋していた。
忍術学園を卒業してからも、この人と一緒にずっと生きて行きたい。
心に決めてから、だけど、そのことは先生には言い出せずにいた。
せめて卒業する前、今よりずっと立派な忍びになって、
先生の隣に居ても恥ずかしくない自分になったら。
この気持ちを先生に打ち明けよう。
そう思えば、辛い忍びの鍛錬も苦しくは無かった。
ただ生き伸びる、その為に選んだ忍びの道だったけれど、俺には目標が出来た。
それだけのことが、俺にとってどれほどの希望になったか、先生にはきっとわからないだろう。
きり丸は考えてることが顔に直ぐ出る。そう乱太郎に言われていたから、
先生と一緒のときはなるべく気を散らして、先生にばかり意識が行くのを逸らしていた。
気持ちを伝える前に、この想いが先生に知れてしまわないよう。
俺なりの最大限の注意で、気をつけてきたはずだった。
それなのに、何も言わないまま、俺の気持ちは間違っていることになって、無かったことになるのか?
嫌だ。
俺は慌てて先生の手を取る。
「だけど… だけど、たとえ忍の掟を破っているとわかっていても、
自分にもどうしようも出来ない想い、そういうのってあるでしょう!?」
必死に叫んだ。
先生は驚いた表情で俺を見つめる。
その時の俺は、よっぽど縋るような目をしていたんだろう。
硬い表情のまま、それでも宥めるような、頑是無い子供をあやすような口調で、先生は俺に言った。
「若いというのはそう言うものだ。だけど、お前だって私くらいになればわかるさ。
どうしようも出来ない想いがあっても、その人やその相手の為にならない感情なら
それはあってはならないのだと。そういうものを忍び、捨て去るのが忍者というものだ」
本当にそうなのか。先生はそれで良いと思っているのか。
俺の気持ちは、じゃあどうしたら一番良いのか。
言いたいことは沢山あった。
俺が口を開こうとしたその時、午後の授業の予鈴が鳴った。
「…もう、こんな時間か。急げ!授業が始まるぞ」
先生に背中を押されて、俺は少しよろける。
確かに次の授業は山田先生の実習だ。急がなければ怒られる。
やりきれないまま、俺は先生に一礼をすると、校庭に向かって駆け出した。
それから、先生とはちゃんと話をしていない。
口を開けば、隠さねばならないはずの想いが溢れてしまいそうで、
先生を責める言葉が口をついて出てしまいそうで、
学園内で会っても、黙礼をして先生の前から逃げていた。
先生もどこか気まずいのか、俺の視線を感じると、ふいと顔を逸らしていた。
本当は、長期休暇も団蔵の家でバイトをしながら過ごすつもりだった。
だけど先生は言ったんだ。
『お前の帰る所は私の家だろう?さ、行くぞ!』
お前の帰る所。
その言葉に、胸が引き絞られるような心地になる。
俺の想いを粉々にするような言葉をはかれても、俺はどうしようもなく先生に縋っている。
そんな自分が、たまらなく惨めだった。
俺の気持ちは、本当に間違っているのか。
そのことばかりをずっと考えている。
「きり丸?どうした、具合でも悪いのか?」
降ってきた声に顔を上げると、先生が心配そうな表情でこちらを覗き込んでいた。
いつの間にか食事の手も止まり、思考に沈殿していたことに気付く。
「いえ…何でもありません、すみません」
すっかり冷めた飯を置き、またいつもの思考に陥っていたことに自己嫌悪しながら、俺はぼそぼそと返した。
先生はそれに納得しなかったのか、身を乗り出して俺の額に手をあてた。
「熱でもあるのか?ぼんやりしているぞ」
久々の先生の体温に、俺はびくりと体を震わせる。
先生はそれに眉を顰めると、体も俺の方に寄せ、気遣わしげに俺を検分し始めた。
間近に感じる先生の質量。匂い。気配。
そんなものの全てが、ただただいとおしく、また苦しくて仕方がなかった。
先生は、先輩方の関係を、若いうちの熱情、と言った。
先生の体温を感じるだけで、こんなにも熱くなる自分がわかる。
熱情。そうかもしれない。恋情が熱の塊なのだとしたら、
俺の中に溢れる先生への想いが、俺の喉を焼き、胸を焼き、
思考まで焼ききって、俺を駄目にしているのかもしれなかった。
それならば、本当にこの想いは捨ててしまわなければならないのかもしれない。
先生を間近に感じながら、俺はぼんやりとそんなことを考えていた。
いらえも返さない俺に対して、先生は何を思ったのか、そっと俺を抱き寄せた。
「何か悩みでもあるのか?私でよければ何でも聞くから、言ってみろ」
温かな体温、柔らかな口調に、俺は大声で泣き出したい気持ちに襲われた。
もうやめてくれ。あなたを好きでいちゃいけないなら、もうあなたのことを忘れさせてくれ。
手ひどい言葉で俺を傷つけて、二度とあなたが好きだなんて思わないほど諦めさせてくれ。
このままで居たい。抱き返して、あなたが好きだと告げて、ちゃんとあなたの答えを聞きたい。
卒業してから先も、あなたとずっとずっと一緒に居たい。
相反する二つの感情が押し寄せて、俺はなすすべもなく、
先生を抱き返すことも出来ず、ただぼんやりと座っていた。
先生は優しく俺の背中を撫でている。
このまま何も言わなければ、一年生のときのような、
ただ温かな親子みたいな二人で居た頃の関係で居られる。
柔らかく、温かく、真綿で首を絞め続けられるような日々。
俺はどうしようもなく、そんなものを望んでいた。
だけどもう息が詰まって、このままでは死んでしまいそうなんだ。
言わなければ。伝えなければならない。
「あのね、先生…」
死刑判決を受ける罪人の心地で、俺は口を開いた。
<諦めさせて・了>